「Uncategorized」カテゴリーアーカイブ

後期研修医と医局

 後期研修医が医局に属さない道を選択すると、専門医の資格を得ることができません。しかし専門医でなくても、就職できる医療機関は沢山ありますし、非常勤案件の中から専門性やスキルを求められないものを選択することもできます。昔はアルバイト先も医局が紹介していましたが、今ではオンライン上の転職斡旋サイトに紹介してもらえます。後期研修医がフリーのまま、キャリアを積まずに医師業を続けることは十分可能なのです。後期研修医の中にはそうした状況を自ら選んでいる人がいます。フリーの身であれば雑務に関わる必要もありませんし、余計な労働を課されることもありません。待遇も自分に合ったものを選ぶことができますし、転勤を恐れる必要もありません。ですから若い医師の中には、キャリアより自由を選ぶ人が相当数いるのです。

 しかし彼らは本当にキャリアを積む必要はないのでしょうか。実は「産業医」であれば、特殊なトレーニングを受けなくても簡単に取得することができます。集中的に講座を受ければ免許が与えられるのです。産業医の需要は社会構造の変化とともに高まっており、その波に乗ることができます。会社員の労働環境を守ろうとする動きが加速している中、今後も産業医の需要は増え続けるでしょう。産業医の仕事には、「嘱託」と「専属」とがあります。前者であれば非常勤として月に1度、雇い主の企業を訪れて健康上のアドバイスをするだけです。後者であればその企業の会社員となり、常勤することになります。

 後期研修医の身分になると、アルバイトを始めることができます。健康診断、献血、当直等で十分生活することが出来るので、医局に頼る必要がありません。

非常勤と医師賠償責任保険

 医師賠償責任保険は医師の多くが加入している保険です。民間医局等がよく知られており、加入すれば医療事故が訴訟に至った場合に、損害賠償金や弁護士費用等を補償してくれます。保険費用は医師にとってそれほど高いものではなく、年間5万前後とされています。任意保険ではないものの、安心して日々の医療行為に携わるためには、加入するのが無難でしょう。加入すべき医師は常勤医だけではありません。スポット勤務等で生活するフリーランス医師こそ、加入すべき医師だと言えます。というのも、常勤医であれば訴訟で訴えられるのは病院であることが多く、常勤医個人の責を問われても、病院が加入している保険で補償されるものだからです。それに対して非常勤医は勤め先の医療機関の保険に頼ることができず、万一訴えられたら自分ひとりで争わなければなりません。

 ところで医療訴訟発生の頻度はどの程度なのでしょうか。あるアンケート調査によれば、医療訴訟に関わった医師は、全医師の10%にのぼるとされます。10人に1人が裁判に巻き込まれていることを意味しますから、相当な数であると言えます。裁判沙汰になると、数か月ではなく、年単位の争いに発展します。忙しい医師生活に加え、裁判にも労力を割かなければならず、肉体的精神的疲労は計り知れません。では過去の訴訟の結果はどうなっているのでしょうか。医療訴訟において、医療機関や医師が敗訴する確率は20%前途とされています。つまり5人に1人は裁判で負けているのです。総合すると、100人の医師の内、10人が医療訴訟に巻き込まれ、2人が負けているという実状だと分かります。受け止め方は様々でしょうが、確率を高いと考える人は、医師賠償責任保険に加入すべきでしょう。

当直勤務の乗り越え方

 スポット勤務の中でもハードな仕事が当直勤務です。待機するにしてもいつ声を掛けられるか予測できませんし、ピッチは常に携帯しなければなりません。検食は決して美味しくありませんし、用意されたベッドは簡素なものがほとんどです。シャワールームも古い病院であれば汚いですし、よく眠れないまま朝を迎えて、そのまま日中の業務に従事しなければなりません。しかし医師である以上、当直勤務から逃れることは難しく、待機時間中に少しでもストレスを和らげることが求められます。

 当直勤務が辛いのは、第一に睡眠不足が原因です。睡眠時間が少ないことに加え、何度も起こされることで深い眠りにつくことができません。その身体状態のまま翌日の勤務をこなさなければならないため、当直の日は少しでも早く就寝することを心掛けるべきです。また睡眠の質を高めるための工夫が大切です。一番良くないのは机に突っ伏して寝てしまうケースです。カルテを書いている途中で眠気に襲われ、そのまま居眠りしてしまう医師もいますが、この寝方で深い眠りを得ることはできません。眠気を感じたら、躊躇せずにベッドで寝るようにしましょう。またベッドの用意されている部屋は面倒でも暗くすることが重要です。明るいまま寝入ってしまうと、眠りは浅くなります。

 当直勤務の辛さは睡眠不足のみに起因しません。急患が全く発生せず、手持ち無沙汰に苦しめられることもあります。とはいえ枕が変わればぐっすり眠れるものでもなく、ストレスだけが貯まります。そのような時は、映画鑑賞や読書をお勧めします。現代はネット環境が整っているため、映画を見放題のサイトで楽しむことができます。パソコン、タブレット、スマホを持ち込むことができれば、後は院内のネット環境に接続するだけです。

地方のフリーランス医師が注意すべきこと

 スポット勤務や定期非常勤のみで生計を立てる医師、つまりフリーランス医師が増えていますが、フリーランス医師が地方で働く時は東京に比べて注意を要します。地方都市は医局の力が強いところも多く、フリーランス医師が肩身の狭い思いをすることも少なくないからです。地方で非常勤として働くときは、専門を問わないスポット勤務がお勧めです。例えば、健康診断、献血、寝当直等は気楽に従事することができます。これらの業務は特別なスキルを必要としないことから、特段の参入障壁がありません。つまり医局の影響から逃れることのできる仕事なのです。しかも健康診断や急患対応はどの地域でもそれなりに需要があり、食い逸れることがありません。

 医局といがみ合えば、フリーランス医師はその地域で働くことが困難になります。特に医局の権力が衰えていない都市では、外部の医師を雇った病院に対して、医局の教授が怒りを露にすることもあります。そうなるとフリーランス医師は突然解雇されたり、勤め先を他地域の医療機関に変えたりせざるを得なくなります。医局との無用な争いを避けるためには、当該地域の専門科目と医局との関係を勉強しておくことが肝要です。医局の規模を調べた上で、支配下にある病院はどこか、医局員の人数はどの程度か等を確認します。最近の医局はホームページにそれらの情報を掲載していることもあるので、新参の医師でも簡単に知ることができます。ホームページで医局員を特定できれば、その医師と仲良くしておくのは賢い処世術です。

 田舎で非常勤医師を続けるつもりなら、在宅医療に強い病院を探すとよいでしょう。田舎では患者との個人的接触が、家族や地域の評判に直結し、需要が舞い込むことに繋がります。

長期休暇中のスポット勤務

 ゴールデンウィークや年末年始に病院に通った人はあまりいないでしょう。これらの期間中はほとんどの病院が休業しています。もちろん病棟、救急外来はお正月であろうと稼働していますが、外来や手術まで対応している病院は稀有だと言えます。しかし長期休暇中に診てもらいたい患者は相当数にのぼるでしょうし、医師としても休日に出勤するのは悪い条件ではありません。というのも、休日のスポット勤務は概して高待遇だからです。医師のアルバイトも、その給与額は需要に左右されます。正月やゴールデンウィークくらいは休みたいと考える医師も多いので、当該時期の応募競争率は低く、給与額は高い傾向にあります。場合によっては、高度のスキルを求められる案件や過疎地の案件と変わらないくらいの時給で働くことができます。実際、平日のアルバイト給与額の2割増しくらいが相場となっており、非常勤のみで生計を立てる医師には特にお勧めできる働き方です。

 せっかくの長期休暇を潰してまで働くのはどうかと考える人もいるでしょうが、正月やゴールデンウィークに働いて、その日数分を平日の休息日に代えるのは賢い働き方だと考えます。長期休暇中は割増の賃金を稼いでいるのですから、同じ労働時間でより高い収入が見込めますし、平日に纏めて休暇を取ることができれば、海外旅行しても人混みでストレスを貯めることがありません。

 但し常勤医の場合、正月やゴールデンウィークを潰してしまっても、平日に振り替えられないことがあります。勤め先の医療機関がブラック企業のように、平日の有給休暇取得を認めないことがあるからです。そう考えると、非常勤で生計を立てている医師の自由裁量が羨ましくも思えるでしょう。